【V6 20th ANNIVERSARY ~Timeless~】
2015年6月20日。
グランドプリンスホテル新高輪 飛天。
初めてV6と生で会うことができた日。
今にして思えば、私にとっては転機となる出来事があった。
まず断っておくが、現在の私は26歳、堕ちるところまで堕ちた坂本担の女である。
それはもうガチ恋である。
しかし、V6にハマりたてであり、当時20歳だった私は岡田担を名乗っていた。
実際に岡田くんが好きだったし、何よりV6を好きになったキッカケが岡田くんだったので、自然な流れと言えよう。
岡田くんを好きになったキッカケや、そこから坂本担を名乗るまでの経緯は、長いので別の機会に綴ることとする。
少しおかしな話になるのだが。
当時の私は、既に坂本くんの魅力に気付いていたが、「自分を岡田担と思い込んでいる坂本担」という大変意味の分からない状態であった。
おそらく、最初に好きになった岡田くんより坂本くんが気になっているという現象を、浮気のようで認めたくなかったのだと思う。
一体誰に対して意地を張っているのか。
全くもって意味のない行為であるが、当時の私は至って真剣であった。
V6全員が好き。箱推し。
だけど、個人としては「岡田担」。
この時点での私は、このスタンスを変えるつもりはなかった。
本編
V6のファンになってすぐ。
初めて購入したV6のCDが、今回のイベントへ参加するキッカケとなる、20周年の記念シングル「Timeless」であった。
封入されたシリアルコードでイベントの抽選に応募できたのだが、まさか1枚だけ購入した通常盤の応募だけで当選するなどとは夢にも思っていなかったのだ。
(後に初回盤も買い足したが、応募期日を過ぎた後のことである)
ジャニーズイベントへの応募など初めてだった私は、「まさか当たりはしないと思うけど、もし当たったらどうしよう、1人で行くの勇気ないな、お母さんついてきて!同行者に設定しとくね!」と前向きなのか後ろ向きなのか分からない応募の仕方をしていた。
メールで当選の知らせを受け、まさかの出来事に発狂すると同時に、強制的に母も同行することが決定してしまったのだ。
ちなみに母は昔、光GENJIのファンだった時期がありV6のことも人並みに知っている。
坂本くんには同い年ということもあり応援したい気持ちがあるとのこと。
だが近年はジャニーズから離れており、突然ジャニーズイベントへの出席が決定し大変困惑していた。
しかし母はノリが良いので、行くと決まればノリノリだったのである。
(今思えば、母の席のために他のファンが落選したかもしれないので、大変申し訳ないことをしていた。母も存分に楽しんでいた様子なので許していただきたい。)
イベント内容はSUPER Very best 初回限定盤Aにて映像で残されているので割愛する。
ちなみにだが、このイベントの際、事前にV6本人が登場するとは一言も告知がなかった。
それどころか、どんな内容のイベントなのか、一切の情報がなかった。
(もしかしたら私が見逃しただけかもしれないが)
イベントに応募しておいて、なにを見に来たのか、把握していなかったのである。
もしかしてV6本人に会えないのでは、なんて心配は微塵もしていなかったが、実際にイベントが開始してみると、なんと当時としては最先端技術であろう、ホログラムライブが開始したのである。
(へえ〜!!私はこれを見に来たのか!!)笑
と、思った。
同時に、
「あれ、本人じゃない?!」
「実物は出てこないの?!?!」
と、ここで初めて心配したわけである。
映像をお持ちの方はぜひご確認いただきたいのだが、冒頭のホログラム映像を見たファンのざわめきが記録されている。
あれは、最先端技術を見た驚きではない。
待ち焦がれたV6がニセモノであったことへの困惑である。笑
「ニセモノだけど、この映像はスゲー!」という、カオスな感情でざわつく中、後半でホログラムと共にV6本人が登場し、「良かった!!本物だ!!!」と歓喜したのである。
(後に、このイベントの記事が掲載された雑誌を購入したのだが「ホログラムライブを見に来たファンの前に、V6本人がサプライズ登場」のような書かれ方をしていて爆笑した覚えがある。)
何はともあれ、初めてのイベントはとても楽しかった。
席は後方だが、目を凝らせば表情も分かる程度の距離感。
初めて生で見るV6に大興奮していた。
ホログラムで空中にV6のロゴを浮かび上がらせた演出を解説する健くんが、「すごいでしょ!これスクリーンに映ってるんじゃないんだよ!」と、ロゴマークの後ろに回り込んでブンブンと手を振っていた姿があまりに可愛らしかったことは永遠に語り継いでいきたい。
年上男性なのにあんなにかわいいとは何事か。
初披露の「此処から」の歌唱中、スツールに座った岡田くんが、背後のスクリーンに表示された歌詞を見つめながら歌っていた姿が印象に残っている。
「まさか歌詞を覚えていないのか」と思わなくはなかったがさすがにそんなはずはないので、おそらく岡田くんは歌詞の意味を噛み締めながら歌っていたのだと推測するが、そのためにお客さんに背を向けてしまっているのだから、実にマイペースな末っ子ぶりに微笑ましくなった。
そんな中、歌う6人をひとりひとり見つめていて、ふと坂本くんを目に留めた。
スツールに腰掛け脚を伸ばして、少し背を丸めてマイクを握り、リラックスした様子で朗々と歌う姿。
初めて生で聴く圧巻の歌声。
その姿を目にして、はっきりと動揺したことを覚えている。
正体の分からない、謎の感情に襲われて、罪悪感のようなものを覚えて目を逸らした。
その感情の意味を考えないようにし、「私は岡田担」と自身に言い聞かせていた。
書きながら自分で思う。
もうそれ恋やん。
めっちゃ好きやん。
岡田担なのに坂本くんにトキめいて罪悪感覚えてるやん。
素直に認めたらいいのに、何目線逸らしてんのもったいない。
何故か頑なに「私の1番は岡田くん」と思い込もうとしていた当時の私は、1人で無駄な抵抗をしていた。
だというのに、脳裏に焼つくのは、スツールから投げ出された坂本くんの脚の長さ。さすが25メートル。
目を逸らそうと頑張っているのに、どうしてもこの脚だけはガン見してしまう。
仕方ない。こればかりは魅惑の脚が悪い。
そんなこんなで、私1人複雑な心境を抱えつつ、6人への愛が積もったところでイベントはフィナーレを迎える。
入場時はステージから登場した6人だが、MCさんから退場は客席の間の花道を通ってくれるというアナウンスがあり、会場が沸いた。
V6が近くに来てくれる。
本当に近いところをV6が手を振りながらゆっくり歩いてくる。
ファンは思い思いに歓声を上げ、推しの名を叫んでいた。
6人が近くに来た時、私も岡田担(?)として控えめながら「岡田くん」と叫んだが、ここでまさかのことが起こった。
隣の母が
『坂本くーーーん!!!!』
とデッカい声で叫んだのだ。
それはもう周囲のファンも振り返るほどの大声だった。
私達のいる方と反対側の客席を見ていた坂本くんが、ビックリしたようにこちらを振り返り、苦笑しながら手を振ってくれたのだ。
それを目にした母と、周囲のファンは大いに沸いた。
私も頭が真っ白になり、悲鳴のように叫んだ。と思う。
突然の出来事に呆然としたまま、退場していく6人を見送った。
アナウンスに従って帰宅する最中、「いやー、坂本くんはあんなにカッコよかったか〜」と満足そうに話す母に、「そうだね」と上の空で相槌を打つことしかできなかった。
既に私の頭は、(母に)ファンサしてくれた坂本くんの姿が焼き付き、悶々としていたのだ。
私が観念して坂本担を名乗るのは、ここから4ヶ月後のことであった。